豊稔池堰堤 約100年前に建設されたレンガ造りのマルチプルアーチ形ダム 

近代遺産

 サークルの後輩たちと旅行に行った四国への卒業旅行で、香川県の豊稔池堰堤(ダム)に立ち寄った。
 豊稔池堰堤は、レンガ造りのアーチ形ダムで、まるでヨーロッパの古城みたいと紹介されていているのを何かで読んだことがあり、長らく気になっていた場所だった。
 後輩たちと複数人での旅行だったので、自分の趣味を押し付けていいものかと思いながらも提案してみると、彼らも興味をもってくれたので、四国旅行の日程に組み込まれることとなった。

 地図でみて分かるように、豊稔池堰堤は香川県の、徳島県との県境付近の山地のなかにある。
 当日は徳島の真ん中あたりの美馬市に泊まっていたので、徳島川から香川に抜けるルートで向かった。吉野川沿いの国道を進んでいる間は穏やかなドライブだったが、次第に車は山道に入る。慣れない運転で、幅の狭いくねくね道をびくびくしながら走らせたすえ、念願の目的地に到着した。目的地の周辺は、ダムがあるような場所なのであたりまえだが、本当になにもない山の中だった。

 車を停めて歩いていくと、ごうごうと水が流れ落ちる音とともに、城壁のようなダムの姿が目に飛び込んできた。

 近くでみるとすごい迫力。高さは32mで、黒部ダムのような巨大なダムと比べると当然高さは低いが、近くまで近寄れるのでその大きさがよく分かる。

 この豊稔池堰堤は、歴史的にも価値の高いダムとして知られている。

 豊稔池堰堤は、1926年(大正15年)に着工され、1929年(昭和4年)に竣工した、現存する日本最古の石積式マルチプルアーチダムである。マルチプルアーチダムというのは、その名前の通りアーチ形の止水壁が複数連なってできたダムのことで、日本ではこの他に1基しかないらしい。しかも、現存するもう一基はダブルアーチ式、つまりアーチの部分が二つくっついたものであるから、このようなアーチがいくつも連なったダムは日本に他にはないと思われる。
 そうした価値を評価され、2006年には国の重要文化財に登録されている。

 ちなみに、豊稔池という命名は、このため池によってこの地域が豊かにみのってほしいという願いからつけられたという。

 近づいて見上げてみるとその高さが分かる。

 個人的に面白かったポイントが、このレンガの階段。ダムからの放流をがっつりと浴びてしまっている。ゲームや映画のファンタジー作品にでてくる古代遺跡とかにありそうな光景だ。

 冒険活劇の世界を妄想しながら、面白くてどんどんシャッターを切ってしまった。

 正面からみると、こんな感じでかっこいい。古くなって黒ずんだレンガが、まさしく中世の古城のような趣をかもしだしている。(個人的には、いつか写真で見たスコットランドのアイリーンドナン城のイメージに重なった)

 ダムの上にのぼることもできたので、上へと続く階段をのぼっていった。

 階段を上った先は、ダム湖をみわたすことができる展望台のようになっていた。

 ちょうど夕日が沈むところで、幻想的な風景が待ち受けていた。

 そして、こちらがダムの止水壁を上から眺めた様子。アーチ型が四つ並んでいるのがよく分かる。


 レンガ造りの建造物というのは、なんとなく温かみがあって、自然の中にも溶け込むように感じる。
 僕たちのほかに観光客がいなかったためもあるかもしれないが、この豊稔池堰堤を眺めていると、雄大な自然の中に忘れられた中世の古城のほとりにいるかのような、不思議と落ち着いた気持ちになった。

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