東京都港区のタワーマンションが立ち並ぶ湾岸地帯に残されている廃鉄橋、晴海橋梁を、７年ぶりに訪れた。
晴美橋梁は、豊洲市場の近くの晴海運河にかかる鉄橋である。東京都の臨港線である晴海線で1989年まで使われていた。
初めて訪れた7年前の2018年には、鉄橋はアーチの鉄部分が錆び、いかにも廃鉄橋とい様子で放置されていたが、近年になって歩道橋として整備されることが決まり、今回の訪問ではその改修途中の様子をみることができた。
改修前の姿と、現在の姿をカメラに収めてきたので、まずは昔の姿から。
●2018年 錆びた鉄色が存在感を放つ晴海鉄橋
晴海運河の岸辺は、ららぽーと豊洲や巨大なタワーマンションが建っており、ダウンタウンの都会的な雰囲気があふれる一画である。そんな近代的な風景のなかに、巨大な晴海橋梁が佇んでいる。
この晴海大橋が位置している豊洲地区は、1923年の関東大震災にのがれきの埋め立てによって生まれた。この豊洲の埋め立て地は工業地帯として発展しており、のちの高度経済成長期において臨港線が整備されるようになった。
初めに開業したのが、総武本線の貨物支線である国鉄小名木川線(1929年開業)、およびそれを延伸した深川線(1953年開業)であった。さらに、1957年には深川線の末端に新設された越中島貨物駅から、春海方向へと晴海線が開通する。主に新聞巻取紙、輸入小麦、大豆、セメント、雑貨などを輸送していた貨物路線であったという。
近くでみると大きくて、かなりの迫力だ。地面と垂直な柱に支えられた半円型のアーチは、下路式ローゼ桁という構造であり、1957年竣工の晴海橋梁は国内初の下路式ローゼ桁橋であったらしい。
貨物船として開通した晴海線は、はじめは国鉄が所有し国鉄の機関車が走っていたが、1958年には東京都に委託され、のちに東京都港湾局専用線として運用されることとなった。しかし、輸送手段がトラックに代替されていくのに伴い、東京都港湾局専用線はつぎつぎと廃止され、平成元年の1989年にこの「晴海線」も廃止へ追い込まれる。したがって、この晴海橋梁30年近くこの姿で残されていたということになる。
後ろの近代的なタワーマンション群との対比が面白い。
橋の上には軌条(レール)と枕木が残されていることも分かる。
橋の入り口はこのように柵と鉄条網によって塞がれていたが、柵越しに撮るとディストピアっぽい世界観になった。
こちらが、いままでと反対側から撮った光景。橋の上に木が育ち始めていた。
枯草も線路の上に生い茂っている。何に使うスペースなのか分からないが、低い柵が付いた足場が出っ張っている部分もみられた。
このように2018年当時の晴海橋梁は、錆び色の美しい廃鉄橋であった。
●遊歩道としての整備・保存がすすむ現在の姿
そんな晴海橋梁に、近年になって動きが訪れた。
4年ほど前、東京都が晴海橋梁を遊歩道として整備する計画を立ち上げたのだ。
計画が始まったころにネットニュースで読んで知っていたので、もうそろそろできているのだろうかと（工事の進捗状況は知らずに）2023年５月頃に再び見に行ってみたところ、現在は工事の途中だった。
これが2023年5月時点の晴美橋梁。アーチはライトグリーンに塗られていた。これは建設当時の色を再現したものであるらしい。
廃墟好きとしては以前の錆色のアーチは好きだったが、鉄橋が使われていた当時の様子を偲べるという点で、これは粋な趣向だなと思う。何より、いつ解体されてしまうか分からなかった貴重な鉄道遺構が、こういうかたちで保存されるというのはありがたいことだ。
屋形船が鉄橋の下を通っていく。タワーマンションが立ち並ぶ近代的な地区のなかで、ここだけ令和とは思えない風景が存在している。待っていたら今にも国鉄の機関車が走ってきそうだ。
橋梁の上は枕木がはがされ、レールだけが残されていた。おそらく横浜の汽車道のようなかたちで、レールだけ埋めて遊歩道にするのだろう。
橋の近くには、このような鉄橋の歴史と遊歩道化の取り組みについて書かれた案内も掲示されていた。一緒にあった工事のお知らせ看板によると、工事の終了は6/27の予定らしい。
あと数か月あとに来れば完成していたのに、おしかった！
遊歩道が完成したらまた訪れて、当時の鉄道の雰囲気を感じながら散策してみたいと思う。
参考文献・関連サイト
今尾恵介『新鉄道廃線跡を歩く ②南東北・関東編』
東京港の工事実施状況 旧晴海鉄道橋遊歩道化工事
建設データ株式会社 歴史的鉄道遺構「旧晴海鉄道橋」遊歩道化事業の現場見学会に参加してきました！
東京都港湾局専用線の廃線跡(晴海・豊洲)
Wikipedia「晴海橋梁」
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