団地という空間には、どこか非日常で独特な雰囲気がある。温かいような懐かしいような、現代都市の揺籃期、昭和の面影が残る特有の空気感があるように思われる。
そんな団地の景色に魅せられて、各地の団地を訪ねてまわってきたが、今回はその第一弾(仙台編)として、今回は仙台市泉区にある「黒松団地」をお送りします。
黒松団地(県営黒松公団住宅)は、地下鉄南北線で仙台駅から7つ先の黒松駅の近くに位置している。南北線は仙台駅を中心として北端の泉中央駅から南端の富沢駅までを結ぶ仙台の主要路線。
仙台に暮らしている感覚としては、仙台駅~北仙台駅くらいまでは仙台市街地だが、それより北は郊外の広大な住宅地という印象。黒松駅もそんな住宅地の真ん中なので、仙台に4年住んでいる私も今回始めて降りたった。
こちらは黒松周辺の航空写真。黄色とオレンジの枠の部分に細長い建物が規則正しく並んでいるのが分かる。これが今回の目的地である黒松団である。
まずは上の地図の黄色の領域を目指して、駅から歩いていく。
すると、5分ほど歩いたところでさっそくそれらしき建物が見えてきた。
幾重にも並ぶ真四角の建物。いかにも団地らしいオーソドックなタイプの建物という感じ。
団地特有のノスタルジックな雰囲気が溢れている。
建物は古いのだろうが、外見をみるかぎり綺麗で住みやすそうだ。
建物の間に公園も設置されている。
こちらも建物と建物の間には公園などの憩いの空間が。
団地の公園には古い遊具が残っていたりするのでそれも見所の一つ。これは、コンクリートの滑り台。奥には亀とウサギのオブジェだろうか。
いい造形をしている。動物型遊具が好物なので気になってしまう。
愛用のフィルムカメラ1でも撮影。団地に夏の空がよく映える。
この区画にこのような建物が20棟ほど。なかなか規模の大きい団地のよう。
仙台といえば、きちんと区画整備された新しい綺麗な街というイメージだったが、その仙台にこのような懐かしい雰囲気の空間が残っていたとは驚きだった。
今まで見てきたのは、UR都市機構が管理している比較的建物の新しい区域でだった。
一方でそのさらに奥(冒頭の地図でオレンジで囲った区画)には、県営の団地が広がっている。
こちらがその黒松団地第二住宅。1963~66年に完成し、今年で築約60年になる。URの建物と比べると、より古そうな外観だった。
このような建物が、10棟ほど並んでいた。
こちらはそのお隣の区画にあたる県営黒松団地第三住宅。同様に古そうな建物が並んでいた。
こちらもフィルムカメラで撮影。
団地の前には、公園のようなスペースが。こちらは少しレトロな、球状のジャングルジム(?)
今は固定されていて動かないようだが、昔は回転したのかも。
建物の前を歩いていると、どこからかピアノを弾く音が聞こえてきた。人が住んでいる気配が感じられて、なんとなく懐かしい気持ちになる。
昭和の雰囲気を残す団地は大変貴重なものに感じられたが、一方で問題も抱えているらしい。
特に築60年ほどを迎える黒松団地第二住宅は、耐用年数が残り10年ほどを迎え老朽化の問題があるのだが、今後建て替えはしない方針であると県は発表している。
災害公営住宅の整備に伴い住宅ストックの余剰が増えていくことなどから、県は新たな公営住宅の整備は行わない方針としていて、今の住民たちには転移を促しているという。
今回は訪れた団地の景色は、今後十年以内に取り壊されてしまうことになるだろう。
やや寂しい思いもするが、時代の流れを考えると仕方ないことなのかもしれない…
取り壊される前に建物を記録した本記事は、もしかしたら貴重な記録になったりするのだろうか。
廃止が決まっている公営住宅は宮城県にほかにもあるようなので、廃止までにすべて記録できればいいなと、夢想しながら団地探訪の第一弾は終わりにする。
- Nikon FE + Nikor-S Auto 50mm F1.4, フィルムはFUJICOLOR ISO100 ↩︎
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